「TMR」「カーフハッチ」「体細胞」…いくつわかる?牧場の“裏側”と“こだわり”を知る『酪農用語』解説【中級編】

「初級編」で、牛の一生や、畑の景色の見方がわかってきた皆さん。
中級編では、道路からは見えない「牛舎の中」や、酪農家さんの「プロのこだわり」に迫ります。
「初級編」はこちらから!

「牛は何を食べているの? 草だけじゃないの?」 「中には牛が…あの白いドームは何?」

これを知れば、あなたはもう「ただの牛乳好き」ではありません。 スーパーに並ぶ牛乳パックの向こう側に、生産者の努力が見えてくる「牛乳マニア」への入り口へようこそ!


牛はただ漫然と草を食べているだけではありません。 人間と同じように「バランスの良い食事」を摂ることで、あの大きな体を維持し、ミルクを出しているのです。

① 粗飼料(そしりょう)と 配合飼料(はいごうしりょう)

【意味】 牛の食事の2大カテゴリー。

・粗飼料(そしりょう): 牧草やデントコーンなど、繊維質の多いエサ。
・配合飼料(はいごうしりょう): トウモロコシや大豆などの穀物、ミネラルなどを配合したエサ。

【ここがポイント】
「草だけじゃないの?」と思った方、実は違うんです。 人間に例えるとわかりやすいでしょう。

粗飼料は、「白米(主食)」
牛の大きな胃袋を動かし、健康のベースを作るために絶対に必要な繊維質です。
濃厚飼料は、「おかず」
牛乳を作るための高いエネルギーやタンパク質を補給します。

酪農家さんは、牛の体調やミルクの量に合わせて、この「ご飯とおかず」の比率をグラム単位で調整しています。 トップアスリートのような徹底した食事管理が、あの一杯の牛乳を支えているのです。

引用元:TMR(total mixed rations:混合飼料)への取り組み | 株式会社岩手山麓ディリーサポート Official Website

② TMR(ティーエムアール)

【意味】 上記の「粗飼料」と「配合飼料」を、すべて混ぜ合わせた「完全混合飼料」のこと。 専用の巨大なミキサー車で攪拌(かくはん)して作ります。

【ここがポイント】
なぜわざわざ混ぜるのでしょうか?
それは、牛が美味しい「配合飼料(おかず)」ばかりを選り好みして食べてしまうことがあるからです。 おかずばかり食べると、人間と同じでお腹を壊したり、栄養が偏ったりします。

一口食べれば、「主食」も「おかず」も栄養バランスよく口に入るようにする。 牛の偏食を防ぎ、健康を第一に考えた、プロの工夫が詰まった給餌方法です。

トラック型のTMRミキサー車が、牛舎内でエサを配っている様子
引用元:分離給餌とTMR|畜産ZOO鑑(ちくさんずーかん)

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牛のごはん大解剖!中標津の牛乳は「何」からできている?

牛舎の設備や、庭先に見える小さな小屋。 それらには全て「病気を防ぐ」「ストレスを減らす」という明確な目的があります。

③ カーフハッチ(ハッチ)

【意味】 生まれたばかりの子牛を育てるための、プラスチック製の小さな白い小屋。 よく牛舎の外や庭先に、白いイグルー(かまくら)のようなドームが並んでいるアレです。

【ここがポイント】 「どうして親から離して、一頭ずつポツンと入れるの?」と思うかもしれません。 これは、免疫力の弱い赤ちゃん牛を「病気から守るため」です。

集団生活をさせると、一頭が風邪をひいただけですぐに蔓延してしまいます。 体が丈夫になるまでの間、個室で一頭一頭、丁寧にミルクを与えて管理する。 あの白いドームは、未来の母牛を大切に育てるための「専用ベビールーム」なのです。

一頭一頭、大切に育てられる子牛たちの様子

④ フリーストール

【意味】 牛をつなぎ留めず、広い牛舎の中を自由に歩き回れるようにした飼育スタイル。
(「つなぎ飼い」=一頭ごとのスペースが決まっている伝統的なスタイル)

【ここがポイント】
大規模な牧場で多く採用されている、カマボコ型の大きな牛舎です。 牛は自分の好きなタイミングでごはんを食べ、水を飲み、好きな場所で休むことができます。

もし見学などで、牛たちが柵の中に繋がれず、のんびりと歩いている光景を見たら、「ここはフリーストール牛舎だな」と注目してみてください。
牛の自由度を高めることで、ストレスを減らす工夫の一つです。

牛たちが自由に過ごすフリーストール牛舎

酪農家さんが毎日チェックしている数字があります。 これこそが、牛乳の品質を守る「最後の砦」です。

⑤ 体細胞(たいさいぼう)

【意味】 牛乳に含まれる細胞の数。 牛の健康状態(特に乳の健康)を示すバロメーターです。

【ここがポイント】
この数字は「低ければ低いほど良い(健康)」とされます。 牛がストレスを感じたり、体調を崩していたりすると、この数値が上がってしまいます。

酪農家さんは、牛のベッドをこまめに掃除したり、搾乳機を清潔に保ったりして、毎日この数字と戦っています。
「体細胞が低い」=「牛が健康で、衛生管理が徹底されている」ということ。
美味しい牛乳の裏側には、この数字を低く保つための地道な努力があるのです。


牛乳は、ただ牛がいれば出るものではありません。

栄養バランスの整ったエサ(TMR)を与え、 ハッチで子牛の頃から健康を守り、 快適な牛舎でストレスを減らす。

その結果として、体細胞の低い、最高品質の生乳が搾られます。

中級編の言葉を知ることは、酪農家さんの「管理技術」と「プロ意識」を知ること。
もし機会があれば、そんな背景を想像しながら、ゆっくりと牛乳を味わってみてください。

さて、いよいよ次は「上級編」!
そこには、SF映画のような「搾乳ロボット」や「スマート農業」の世界が広がっています。

お楽しみに!

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