
町で見かける「銀色の巨大トラック」
中標津で車を運転していると、必ずと言っていいほどすれ違う車があります。
鏡のようにピカピカに磨かれた、巨大な銀色のタンクローリー。
「ガソリン? 水?」 いいえ、中身はすべて「搾りたての生乳(せいにゅう)」です。
彼らは、町内の牛たちが生産したミルクを、
鮮度そのままに工場へ運ぶ「運び屋(プロフェッショナル)」たち。
今回は、牧場のバルククーラーからスーパーの棚に並ぶまで、
絶対にミスが許されない「牛乳のリレー」を追跡しました。
1. 牧場の「バルククーラー」: 鮮度を守る最初の砦
牛乳の旅は、牧場から始まります。
搾乳された37℃前後の温かい生乳は、
パイプを通って瞬時に「バルククーラー」という巨大な冷蔵タンクへ。
ここで一気に4℃以下まで冷却されます。
菌を増やさないための、最初の、そして絶対のルールです。
農家さんは毎日、この温度管理とタンクの洗浄を徹底し、「集荷」の時を待ちます。
2. 集荷ドライバーの流儀: 「検査パス」しないと、積みません。

やってきたのは、あの銀色のミルクローリー。
でも、すぐにホースを繋いで「はい、満タン!」とはいきません。
ドライバーさんは、まず牧場のタンクから少量の生乳を採取し、
色や匂い、温度、アルコール検査などを厳しくチェックします。
「異常なし。よし、積もう」
もしここで少しでも異常があれば、集荷は拒否されます。
なぜなら、もし悪い生乳をローリーの巨大タンクに混ぜてしまったら、
他の中標津の農家さんの良質な牛乳まで全部ダメになってしまうからです。
あの一台のトラックには、
数軒分の農家さんの「生活」と「プライド」が混ざり合って積まれている。
だから、ドライバーさんの責任は重大なのです。
3. 工場の「鉄壁」: 抗生物質は“一滴”も許さない。

ローリーが向かう先は、JA中標津の乳製品工場や、
国内最大級のチーズ生産拠点である雪印メグミルク中標津工場など。
工場に到着しても、まだ荷下ろしはできません。
ここで待っているのが、「残留抗生物質検査」という、最も厳しい関門です。
【一言!知って得する豆知識】
「牛が風邪をひいて薬(抗生物質)を飲んでいたら?」 安心してください。
治療中の牛の乳は出荷してはいけないルールがあります。
万が一、それが混入していたら? 工場での検査で即座に反応が出ます。
反応が出たローリーの牛乳は、全量廃棄。絶対に製品にはなりません。
この検査体制は、中標津に限らず日本の酪農の誇るべき「鉄壁」のシステムです。
4. パック詰め、そして食卓へ

厳しい検査をクリアしたエリート生乳だけが、ようやく工場の中へ。
「85℃ 15分間」の殺菌工程などを経て、パック詰めされ、
「なかしべつ牛乳」として出荷されます。
牧場で搾ってから、店頭に並ぶまで、最短で翌日〜翌々日。
このスピード感が、あのフレッシュな味の正体です。
5. まとめ: 飲み干す一杯に、プロたちのリレーがある。
何気なく飲んでいるコップ一杯の牛乳。 そこには、
- 農家さん(徹底した冷却・管理)
- ドライバーさん(厳しい目利きと安全輸送)
- 検査員さん(鉄壁の品質ガード)
という、プロフェッショナルたちの「絶対に安全なものを届ける」というリレーがありました。
次にあの銀色のトラックを見かけたら、
心の中で「お疲れ様です!」と敬礼したくなるかもしれません。
彼らが運んでいるのは、ただの液体ではなく、中標津の「宝」なんですから!



