【道東の輝く人】株式会社 標津羊羹本舗 代表取締役社長 長谷川 淳さん

100年の味を、終わりのない未来へ
「存続し続けること」そのものをゴールに据える、4代目の覚悟

きれいに整備されたタワラマップ川のほとり、中標津町商工会の駐車場付近に立つと、長谷川 淳さんはふと目を細め、かつての景色を語り始めます。それは、今では想像もつかないほど泥臭く、しかし活気にあふれた中標津町の記憶でした。


🔥 第1章:迷路のような官舎と、いたずら少年の記憶

かつての中標津駅(現在のバスターミナル)周辺は、鉄道とともに生きる人々で溢れていました。長谷川さんが育ったのは、そのすぐ裏手に広がる鉄道官舎の近く。長屋がびっしりと並び、入り組んだ細い路地は、子供たちにとって格好の「迷路」でした。

「当時はタワラマップ川も、今のように整備はされていなく。生活排水の流れるドブ川のような場所でダムを作ったり、石を投げたりして遊んでいました」

近所の銭湯から薪をこっそり持ち出しては川に捨て、管理人のおじいさんにこっぴどく怒られた。そんなわんぱくな少年のすぐそばで、現在の「長谷川菓子舗」から工場まで、川沿いを通って商品を運んでいたあの頃の景色が、長谷川さんの原風景です。

🌾 第2章:親の背中に見た、人生を賭けた「勝負」

転機が訪れたのは、長谷川さんが高校生の頃でした。それまで本家の長男が継ぐものと思っていた家業において、父が「標津羊羹部門」を引き継いで独立することを決意したのです。

それは、決して平坦な道のりではありませんでした。 「両親は多額の借金をし、退職金まで注ぎ込んで、羊羹一本で食べていくという勝負に出ました。失敗すれば路頭に迷う。そんなプレッシャーが家の中に流れていました」

親から「継いでくれ」と言われたことは一度もありません。しかし、多感な時期に目にした両親の並々ならぬ覚悟。言葉にできないほどの「背中の重さ」を肌で感じた時、長谷川さんの心に静かな火が灯りました。「自分がこの暖簾を繋いでいくんだ」。誰に言われるでもなく、自ら下した決断でした。

🚀 第3章:目指すのは、食べた瞬間の「懐かしさ」

社長に就任してから今日まで、長谷川さんが向き合い続けているのは「変わらない味」という難問です。

「100年の歴史の中で、砂糖の質も、手に入る原材料も変わります。気候や季節に合わせて微調整を繰り返すのは当たり前のこと」

昔と全く同じ材料ではないかもしれない。それでも、お客様が一口食べた瞬間に「ああ、変わらないね。懐かしいね」と感じること。その体験を守ることこそが、標津羊羹の使命だと長谷川さんは考えます。目指す「懐かしさ」という正解に辿り着くために、日々ベストな調整を積み重ねる。それは、職人としての誠実さそのものです。

🏫 第4章:生まれ育った場所、再び灯る場所

2021年、「標津羊羹本舗 甘味茶屋 U an cha」をオープンさせました。

迷路のような路地を走り回っていたあの日から数十年。かつての遊び場は、今や地域の人々が餡とお茶を囲み、静かに語り合う場所へと姿を変えました。町が変わっていく中で、自分が生まれ育った思い入れのある場所に、もう一度人が集まる灯をともす。それは、この町で商いを続けさせてもらっていることへの、長谷川さんなりの感謝の示し方でもあります。

🌍 第5章:永久に存続していくこと、それが唯一のゴール

再来年には、いよいよ創業100周年という大きな節目を迎えます。しかし、長谷川さんの視線はそのずっと先を捉えています。

「100周年はあくまで通過点です。ゴールなんてありません。永久に存続していくこと、そのものがゴールですから」

101年目が始まった時、それは次の「150周年」に向けた基礎を固めるスタートに過ぎません。自分がこの時代に預かったバトンを、いかに良い状態で次の世代へ繋ぎ、歴史の鎖を絶やさないようにするか。派手な変革ではなく、永く続いていくための「当たり前の積み重ね」。その静かな歩みの先にこそ、150年、200年と続いていく中標津の豊かな未来が広がっています。


💖 長谷川さんの「素顔」Q&A

Q1. 道東で一番好きな場所は?
A. 飛行機の窓から見る「格子状防風林」です。道東ならではの雄大で整然としたあの風景を見ると、心が落ち着きます。

Q2. 一番好きな食べ物は?
A. 実は「イチゴショート」が好きなんです(笑)。

Q3. お休みの日は何をされていますか?
A. 家でただぼーっと過ごすのが理想です。誰にも会わずにリセットする時間が、最高のリフレッシュになっています。


🖊️ まとめ

両親の背中に「覚悟」を見出し、今は100年の重みをその手にしっかりと握っています。「永久に存続していくことがゴール」と言い切る長谷川淳さんの言葉は、この町で暖簾を守り続けることの真髄を物語っていました。

中標津の日常を支える「懐かしい味」は、終わりなき未来。というバトンを手に、長谷川さんはこれからも変わらぬ甘みと安らぎを届けてくれるはずです。


ℹ️ 関連情報

【株式会社 標津羊羹本舗】
所在地:〒086-1151 北海道標津郡中標津町川西7丁目2番地
ウェブサイト:https://shibetsuyoukan.jp/

【標津羊羹本舗 甘味茶屋 U an cha(ユーアンチャ)】
所在地:〒086-1001 北海道標津郡中標津町東1条南2丁目1-1
ウェブサイト:https://shibetsuyoukan.jp/uancha/

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